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「完璧な計画」ほど動けなくなる?心理学が教える「クリエイティブ・アボイダンス」の正体

「よし、やりたいことが見つかった!」

「まずは目標を立てて、スケジュールを決めて、道具を揃えて……」


意気揚々と計画を立てたはずなのに、いざ実行の段階になると、なぜか急にやる気が失せてしまったり、別のことを始めたりして先に進まない。そんな経験はありませんか?


「自分はなんて意志が弱いんだろう」と責める必要はありません。実はそれ、あなたの脳があまりに優秀すぎるために起きている心理現象なのです。


今回は、計画を立てると動けなくなる心のブレーキ、「クリエイティブ・アボイダンス(創造的回避)」について、その正体と対策を心理学的観点から解説します。



1. なぜ「あれこれ考え始める」と動けなくなるのか?

やりたいことを見つけた直後はドーパミンが出てワクワクしていますが、詳細な計画を立て始めると、脳は「変化のリアリティ」を感じ取ります。

ここからが問題です。人間の脳には、本能的に「変化を嫌い、現状を維持しようとする機能(ホメオスタシス)」が備わっています。

あなたが「変わろう(行動しよう)」とすればするほど、脳はそれを「危険信号」と捉え、無意識のうちに「変わらなくていいもっともらしい理由」を探し始めます。

これが、行動直前に足がすくむ根本的な原因です。


2. クリエイティブ・アボイダンスとは?

この脳の防衛反応の中でも、特に厄介なのが「クリエイティブ・アボイダンス(創造的回避)」です。

これは、アメリカの形成外科医でありサイコ・サイバネティクス(自己変革理論)の提唱者であるマクスウェル・モルツ博士などが指摘した概念です。

簡単に言うと、「やらなくて済む言い訳を、創造力豊かに作り出すこと」です。

ただのサボりとは違います。「やらない」のではなく、「今はできない正当な理由」を非常にクリエイティブに作り出してしまうのです。


よくあるクリエイティブ・アボイダンスの例

  • 勉強を始める前に部屋の掃除を始める:「環境が整っていないと集中できない」という論理的な理由を創造している。

  • 完璧な道具をリサーチし続ける:「最高の道具がないと失敗するかもしれない」と考え、準備という名目で行動を先送りする。

  • 「今は忙しいから」と自分を納得させる: 重要ではないメール返信や雑用をあえて作り出し、「時間がない」状況を自分で作り上げる。


これらは一見「真面目な行動」に見えますが、深層心理では「本丸(本当にやるべきこと)から逃げるための高度なカモフラージュ」なのです。



3. メカニズム:なぜ脳はそんな邪魔をするのか?

心理学的には、この現象は「コンフォートゾーン(快適領域)」の維持機能として説明されます。

  • コンフォートゾーン: あなたが慣れ親しんでいる、不安のない現状の領域。

  • 新しい目標: コンフォートゾーンの外側にある「未知の領域」。


あなたが「計画」を立てるということは、自分をコンフォートゾーンの外へ連れ出そうとすることです。すると、潜在意識は強烈な不安(認知的不協和)を感じます。

「そこに行ったら失敗して傷つくかもしれない!」

「今のままの方が安全だよ!」

そう考えた潜在意識は、あなたの高い知能や想像力をフル活用して、「やらない理由」を瞬時に捏造します。頭が良い人や真面目な人ほど、この言い訳が巧み(クリエイティブ)であるため、自分でもその嘘に気づけず、「確かに今は無理だ」と納得して行動を止めてしまうのです。



4. 対策:脳のブレーキを外す3つのステップ

クリエイティブ・アボイダンスは強力ですが、メカニズムさえ分かれば対策は可能です。脳の警報を鳴らさずに、こっそりと行動を開始する方法をご紹介します。


① 「あ、これ回避してるな」と気づく

まずはメタ認知(自分を客観視すること)が第一歩です。

「部屋を片付けなきゃ」「まだリサーチ不足だ」と思った瞬間に、「おっと、これはクリエイティブ・アボイダンスが発動しているぞ」と心の中でつぶやいてください。正体に気づくだけで、その魔力は半減します。


② スモールステップ(ベイビーステップ)

脳が変化を恐れるのは、その変化が「大きい」からです。脳の警報センサーに引っかからないくらい、バカバカしいほど小さな一歩を設定します。


  • × ブログを1記事書く

  • 〇 パソコンを開いて1行だけ書く(あとはやめてもいい)

  • × 資格の勉強を1時間やる

  • 〇 テキストを机の上に置く


「これくらいなら変化じゃないよ」と脳を騙すことで、最初の一歩を踏み出しやすくします。これを心理学では「作業興奮」と呼び、一度始めてしまえば、脳はドーパミンを出して作業を続けたがる性質を持っています。


③ 7割の完成度で「発射」する

計画好きの人は完璧主義に陥りがちです。「準備が整ったら」ではなく、「準備しながら走る」スタンスに変えましょう。

「走りながら修正すればいい」と考えることで、「失敗への恐怖」というクリエイティブ・アボイダンスの燃料を断つことができます。



まとめ

やりたいことを見つけて計画を立てたのに動けないのは、あなたが怠惰だからではありません。あなたの脳が正常に機能し、あなたを変化のリスクから守ろうとしている証拠です。

そして、「やらない理由」がたくさん思いつくのは、あなたがそれだけクリエイティブ(創造的)な才能を持っているということです。

その素晴らしい創造力を、「やらない言い訳」を作るためではなく、「どうすれば楽しくできるか」を考えるために使ってみてください。

まずは、脳にバレないくらい小さな一歩から。

今日、ほんの数秒でできることから始めてみませんか?


 
 
 

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