「やりたいこと」が見つからないあなたへ:無理に探さず「どうありたいか」から考える
- nirin-so

- 6月8日
- 読了時間: 5分
「やりたいこと」が見つからない -。
そう感じているあなたは、決して一人ではありません。
現代社会では、「好きなこと」や「情熱を傾けられること」を見つけることがあたかも人生の成功の鍵であるかのように語られがちです。しかし、無理に「やりたいこと」を探し求めようとすると、かえって焦りや劣等感を抱いてしまい、八方塞がりの気分に陥ってしまうことも少なくありません。
私たちは、往々にして「やりたいこと」を具体的な行動や目標として捉えがちです。
例えば、「海外で働く」「起業する」「プロの○○になる」といったものです。
もちろん、具体的な目標は大切ですが、それがまだ見つからない段階で無理に探そうとすると、まるで広大な砂漠でオアシスを探すかのように、ただ疲弊してしまうことがあります。
では、この袋小路から抜け出すにはどうすれば良いのでしょうか? 心理学的な視点から、そのヒントを探っていきましょう。
なぜ「やりたいこと」は簡単に見つからないのか?
「やりたいこと」が見つからない背景には、いくつかの心理的要因が考えられます。
まず、完璧主義の傾向です。「これこそが最高のやりたいことだ!」という理想を追い求めるあまり、小さな興味や関心を「本当にやりたいことではない」と切り捨ててしまうことがあります。完璧な「やりたいこと」など、最初から存在するわけではありません。多くの「やりたいこと」は、試行錯誤や経験の中で形作られていくものです。
次に、自己効力感の低さです。「自分には特別な才能がない」「どうせやってもうまくいかないだろう」といった思い込みが、「やりたいこと」への一歩を踏み出すことを阻んでしまいます。これは、過去の失敗経験や、他者との比較から生じることがあります。
また、情報過多と選択肢の多さも一因です。インターネットやSNSによって、あらゆる情報が手に入る現代では、他者の輝かしい成功事例を目にする機会も増えました。それが「自分も何か特別なことをしなければ」というプレッシャーになり、逆に「自分には何もない」という感覚を強めてしまうことがあります。
「やりたいこと」より先に「どうありたいか」を考える
ここで視点を変えてみましょう。「何をするか」ではなく、「どうあるか」から考えてみるのです。これは、心理学における**「存在論的アプローチ」や、「価値観」**の概念と深く関連しています。
私たちが「やりたいこと」を追い求める根本には、「こうなりたい」「こう生きたい」という根源的な欲求があります。例えば、「社会の役に立ちたい」「人との繋がりを大切にしたい」「常に新しいことに挑戦したい」「穏やかな生活を送りたい」など、これらは具体的な行動ではなく、私たちの**「あり方」**に関わるものです。
「どうありたいか」という問いは、あなたの人生における羅針盤となります。羅針盤があれば、目の前に広がる選択肢の中から、あなたにとって本当に価値のある方向性を見つける手助けをしてくれるでしょう。
「どうありたいか」を見つけるための心理学的アプローチ
では、「どうありたいか」を見つけるために、具体的に何をすれば良いのでしょうか。
自己探求:内省の時間を設ける静かな場所で、自分自身と向き合う時間を作りましょう。以下の質問について、深く考えてみてください。
どんな時に充実感を感じますか?
どんな時に喜びを感じますか?
どんな時に心の平安を感じますか?
どんな人に囲まれていたいですか?
どんな社会を望みますか?
どんな時に「自分らしい」と感じますか?
もし時間やお金、能力の制約が一切なかったら、どんなことをしたいですか?(具体的な行動ではなく、どんな感覚を味わいたいか、どんな状態でありたいか)
価値観の明確化:あなたにとって大切なものは何か多くの心理学者は、個人の幸福と深く関わるのが「価値観」であると指摘します。家族、健康、自由、成長、貢献、創造性、安定、挑戦など、あなたにとって譲れない大切なものは何でしょうか。
リストアップ: まず、思いつくままに大切なものを書き出してみましょう。
優先順位付け: それらに優先順位をつけてみてください。最も大切にしたいものは何ですか?
行動との整合性: あなたの現在の行動は、これらの価値観と一致していますか?もし一致していないなら、どこにズレがあるのか考えてみましょう。
役割の認識:人生におけるあなたの役割は?私たちは、人生において様々な役割を担っています。例えば、「親」「子」「友人」「同僚」「地域の一員」などです。それぞれの役割において、「どうありたいか」を考えてみるのも有効です。
良い友人として、どうありたいですか?
仕事において、どうありたいですか?
社会の一員として、どうありたいですか?
心理的柔軟性の獲得:完璧を求めすぎない「どうありたいか」が見つかったとしても、それが常に完璧に実現できるとは限りません。大切なのは、理想と現実のギャップを受け入れ、その中で最善を尽くす心理的柔軟性です。これは、行動療法で用いられる**アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)**の考え方にも通じます。自分の感情や思考をありのままに受け入れ、価値観に基づいた行動を積み重ねていくことで、少しずつ「ありたい自分」に近づいていくことができます。
「どうありたいか」が「やりたいこと」を導く
「どうありたいか」が明確になると、不思議と「やりたいこと」のヒントが見えてきます。例えば、「人との繋がりを大切にしたい」という「ありたい姿」が見つかったとします。
そこから、「人の話を聞く仕事」「ボランティア活動」「コミュニティ運営」など、具体的な「やりたいこと」の選択肢が自然と浮かび上がってくるかもしれません。
これは、あなたが羅針盤を手に入れたことで、目の前の広大な海の中から、進むべき方向性を見つけられるようになった状態です。最初から明確な航路が見えなくても、羅針盤があれば、向かうべき大まかな方向が分かります。あとは、その方向に向かって一歩ずつ進んでいけば良いのです。
「やりたいこと」が見つからない時は、焦る必要はありません。まずは、あなたが人生で「どうありたいか」という根源的な問いに向き合うことから始めてみてください。
きっとそれは、あなたの心の奥底に眠る本当の願いを呼び覚まし、あなたの人生を彩る「やりたいこと」へと導いてくれる、最も確かな道筋となるはずです。
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