「りんごとバナナ、どちらが正しい?」~正しさという名の防衛反応~
- nirin-so

- 1月19日
- 読了時間: 4分
「りんごとバナナ、どっちが正しい?」
そんな風に聞かれたら、きっと誰もが「えっ?質問の意味がわからない」と思いますよね?りんごにはりんごの、バナナにはバナナの良さがあり、そこに「正誤」という概念を持ち込むこと自体がナンセンスだからです。
しかし、これが「人間」のこととなると、私たちは途端にこのシンプルな真理を忘れてしまいます。
今回は、この「りんごとバナナ」の例えを入り口に、なぜ私たちが他人の個性を攻撃し、自分たちの正しさを主張し合ってしまうのか。その心のメカニズムを心理学的な観点から紐解いていきたいと思います。
1. 私たちの脳が陥る「素朴実在論」の罠
なぜ私たちは、りんごに「黄色くなれ」とは言わないのに、人に対しては「もっとこうあるべきだ」と言ってしまうのでしょうか。
その背景には、心理学で「素朴実在論(Naïve Realism)」と呼ばれる認知のバイアスがあります。これは、「自分は世界を客観的かつ正確に見ており、自分と意見が異なる人は、何らかの偏見を持っているか、情報が不足しているのだ」と思い込んでしまう心理状態を指します。
自分にとっての「当たり前」を絶対的な正義だと信じ込んでしまうため、そこから外れるバナナ(他人)を見ると、「間違っている!修正しなきゃ!」という衝動に駆られてしまうのです。
2. 「正しさ」の主張は、心の防衛反応
また、私たちが「自分の正しさ」を相手に押し付けてしまう時、心の中では「社会的アイデンティティ理論」が働いています。
人間には、特定のグループ(自分と同じ価値観を持つ集団)に属することで安心を得たいという本能があります。自分と違う存在を認めると、自分の立ち位置が脅かされるような不安を感じることがあるからです。
攻撃することで自分を保つ: 相手を「おかしい」と否定することで、相対的に「自分は正しい側にいる」という安心感(自己肯定感の代替品)を得ようとする。
不協和音の解消: 自分と違う生き方をしている人を見ると、心に「認知的不協和」(モヤモヤした不快感)が生じます。その不快感を消すために、相手を変えようとしてしまうのです。
しかし、これは「りんごがバナナに色を塗り替えるよう強要している」ようなもので、お互いにとって非常にエネルギーを消耗する不毛な争いと言えます。
3. 「十人十色」を心理学的に解釈する
「十人十色」という言葉は、心理学では「個体差」や「多様なパーソナリティ」として尊重されます。
例えば、性格診断(ビッグファイブなど)で見ても、外向的な人がいれば内向的な人もいます。これはどちらが良い悪いではなく、生存戦略の違いに過ぎません。
りんご(慎重派): リスクを避け、着実に成果を出す。
バナナ(行動派): 素早く行動し、新しい場所を開拓する。
もし世界がりんごだけだったら、新しい環境への適応が遅れるかもしれません。逆にバナナだけだったら、危うい橋を叩かずに渡って全滅するかもしれません。
「果物」というカテゴリーが豊かなのは、それぞれが違う役割(形・味・栄養)を持っているからであり、人間社会も全く同じなのです。
4. 違いを認め、尊重し合うための「心のレッスン」
では、どうすれば私たちは、りんごを愛でるように、他人の個性を尊重できるようになるのでしょうか。
① 「べき論」を手放す
「〇〇するべき」「普通はこうだ」という言葉が浮かんだら、それは自分の中の「りんご専用ルール」だということに気づきましょう。「バナナにはバナナのルールがあるんだな」と、一歩引いて眺める練習が効果的です。
② 心理的安全性を意識する
自分と違う人を攻撃しないためには、まず自分自身が「自分はこのままでいい」という自己受容ができている必要があります。自分の個性を愛せている人は、他人の個性に対しても寛容になれる傾向があります。
③ 「カテゴリー」ではなく「個」を見る
「最近の若者は」「あの職業の人は」といった大きなカテゴリーで人を括るのをやめ、目の前のその人が、どんな「色」や「味」を持っているのかに好奇心を持ってみましょう。
結びに:それぞれの「旬」を尊重する世界へ
りんごは冬に美味しく、バナナは一年中私たちを元気づけてくれます。イチゴには春の輝きがあり、スイカには夏の爽快感があります。
人も同じです。輝く場所も、成長するスピードも、持っている才能も全員違います。
モラルを守ることは社会生活の土台ですが、その土台の上で、どのような花を咲かせ、どのような実をつけるかは、その人の自由です。
今回は少し極端なお話をしましたが、
「りんごとバナナ、どちらが正しい?」
この問いに対して、自信を持って「どちらも、そのままで素晴らしい」と言える。そんな風に、お互いの個性を尊重し合える心の余裕を持ちたいものですね。
.png)







コメント