「上手くいく証拠」より「上手くいかない証拠」の方が集めやすいのはなぜか?
- nirin-so

- 9月2日
- 読了時間: 5分
私たちの脳は「失敗」を覚えるようにできている
あなたは「上手くいかない証拠集め」と「上手くいく証拠集め」、どちらが簡単に感じますか?多くの人が前者だと答えるのではないでしょうか。
「上手くいかないこと」を探すのは、案外簡単です。例えば、ダイエットが続かない理由、仕事でミスをした瞬間、人間関係がこじれた出来事など、私たちは日々の生活の中で数えきれないほどの失敗を経験しています。
しかし、「うまくいっていること」を探すのは、なぜか難しい。小さな成功体験、努力が報われた瞬間、誰かに感謝されたこと…。そうしたポジティブな出来事は、意外と私たちの記憶から抜け落ちてしまいがちです。今回は、この現象を心理学的観点から紐解き、その理由と、どうすれば「成功の証拠」を増やせるのか、具体的な対策についてお話ししたいと思います。
1.なぜ「成功の証拠集め」は難しいのか?
この問題の根底には、いくつかの心理学的なバイアスが潜んでいます。
❌ネガティブ・バイアス(Negative Bias)
人間の脳は、ネガティブな情報に対して、ポジティブな情報よりも強く反応し、記憶に残りやすいようにできています。これは、進化の過程で、危険を回避するためにネガティブな出来事を学習することが生存に有利だったためと考えられています。
例えば、あるプロジェクトで99の成功と1つの失敗があったとします。私たちは、99の成功よりも、たった1つの失敗に強くフォーカスしがちです。「せっかく99もうまくいったのに、あの1つのミスで台無しだ…」と感じてしまうのは、このネガティブ・バイアスの影響です。私たちは無意識のうちに、失敗の証拠ばかりを集めてしまうのです。
❌自己奉仕バイアス(Self-Serving Bias)の罠
自己奉仕バイアスとは、成功を自分の能力や努力によるものとみなし、失敗を外部の要因や環境のせいに帰属させる傾向のことです。一見するとポジティブなバイアスに思えますが、実はこれも「成功の証拠集め」を妨げる要因になります。
私たちは成功した時、「自分の才能があったから」「運が良かっただけ」など、成功を当たり前と捉えたり、外部の要因に帰属させたりすることがあります。その結果、成功体験を自分自身の成長の証拠として認識しにくくなります。一方で、失敗した時は「あの人のせいだ」「環境が悪かった」と他責にすることで、自分自身の問題点から目を背けてしまいがちです。これにより、私たちは成功の証拠を「当たり前」と見過ごし、失敗の証拠を「不可抗力」と片付けてしまい、結果的にどちらの証拠も適切に集められなくなります。
❌確証バイアス(Confirmation Bias)によるフィルター
確証バイアスとは、自分の信じていることや仮説を裏付ける情報ばかりを集め、反証する情報を無視したり軽視したりする傾向のことです。
もしあなたが「自分は成功できない人間だ」という信念を持っているとします。すると、確証バイアスの働きにより、成功の証拠は無視され、失敗の証拠ばかりが目に付くようになります。例えば、仕事で褒められても「たまたまだろう」と流してしまい、少しでもミスをすると「やっぱり自分はダメだ」と、自分の信念を補強するような証拠ばかりを集めてしまいます。
このように、私たちの思考は、無意識のうちに「成功の証拠集め」を難しくするフィルターをかけているのです。
2.「成功の証拠」を増やすための具体的な対策
では、どうすればこのネガティブなループから抜け出し、「成功の証拠」を意識的に集められるようになるのでしょうか。心理学的なアプローチから、いくつかの対策を提案します。
✅対策1:ジャーナリング(Journaling)の習慣化
手書きでもデジタルでも構いません。寝る前に「今日うまくいったこと」を3つだけ書き出す習慣をつけましょう。これは「感謝ジャーナル」や「成功ノート」とも呼ばれます。
「今日、スムーズに仕事が進んだ」「誰かにありがとうと言われた」「新しいレシピに挑戦して美味しくできた」など、どんなに小さなことでも構いません。重要なのは、抽象的な成功ではなく、具体的な行動や出来事として記録することです。これにより、漠然とした成功体験を、視覚的に認識できる確固たる証拠へと変えることができます。
✅対策2:リフレーミング(Reframing)で視点を変える
リフレーミングとは、物事の捉え方や見方を変え、別の角度から捉え直すことです。
例えば、プレゼンで失敗したとします。ネガティブに捉えれば「なんて自分はダメなんだ」となりますが、リフレーミングしてみましょう。「今回の失敗から、次に活かせる改善点がはっきりわかった」「聴衆の反応から、もっとわかりやすい説明の仕方が見つかった」と捉え直すことで、失敗を「成長のための貴重なデータ」という成功の証拠に変えることができます。
✅対策3:「スモール・ステップ」の積み重ね
大きな成功を目指すのではなく、達成可能な小さな目標をいくつも設定し、その達成を記録していきましょう。
「1日10分だけ勉強する」「SNSの投稿を週に3回は行う」など、どんなに小さな目標でも構いません。この「スモール・ステップ」を達成するたびに、脳内ではドーパミンが分泌され、達成感とモチベーションが向上します。これにより、私たちは「自分にはできる」という自己効力感を高めることができ、成功の証拠を意識的に増やしていくことができます。
自分だけの「成功コレクション」を作ろう
「うまくいかない証拠集め」は、私たちの生存本能に根差した自然な行動です。しかし、そのままでいると、私たちは自己肯定感を失い、自信のない自分になってしまいます。
今回ご紹介した対策は、私たちの脳の「失敗を覚える癖」を少しずつ変えていくためのものです。日々の中で「成功の証拠」を意識的に集め、自分だけの「成功コレクション」を作っていきましょう。
小さな成功の積み重ねが、やがて大きな自信となり、あなたの人生をより豊かなものにしてくれるはずです。今日から早速、始めてみませんか?
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