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「人を大切にできない人」は「自分を大切にできていない人」~負のループから抜け出すために

「人を大切にできない人は、自分を大切にできていない人」

この言葉を聞いて、ハッとさせられる人は少なくないでしょう。

私たちの人間関係は、鏡のようなもの。相手にどう接するかは、そのまま自分自身への接し方を映し出しているのかもしれません。


今回のブログでは、「人を大切にすること」「自分を大切にすること」「人から大切にされること」 がどのように関係し合い、時に抜け出しにくい「負のループ」を生み出すのか。そして、そのループから抜け出し、より健全な人間関係を築くためのヒントを、心理学的な観点から掘り下げていきます。


負のループの正体:3つの心理的メカニズム

ブログ冒頭に書いた3つの要素は、それぞれが複雑に絡み合い、一種のサイクルを形成しています。

  1. 自分を大切にできないと、人を大切にできない

  2. 人を大切にできないと、人から大切にされない

  3. 人から大切にされないと、自分を大切にできない


このサイクルがなぜ生まれるのか、3つの心理学的メカニズムから見ていきましょう。


1. 内的作業モデル(Internal Working Model)

心理学者のジョン・ボウルビィが提唱した「愛着理論(Attachment Theory)」には、「内的作業モデル」という概念があります。これは、乳幼児期に養育者との間で築かれた関係性を通して形成される、自分自身や他人、そして世界に対する無意識の「信念」や「期待」のことです。

例えば、幼い頃に「自分の要求が満たされず、感情を受け止めてもらえなかった」という経験が多いと、「自分は愛される価値がない」「他人は信頼できない」といった内的作業モデルが形成されやすくなります。このような信念を持つ人は、大人になってからも、無意識のうちに「人を大切にすることは、裏切られるリスクがある」「どうせ尽くしても報われない」といった考えに囚われ、人に対して心から愛情を注ぐことが難しくなってしまいます。

つまり、自己肯定感の低さや、他人への不信感という「自分を大切にできていない状態」が、人を大切にすることを阻んでしまうのです。


2. 自己評価とミラーリング(Self-Esteem and Mirroring)

私たちは、他者との関係性の中で「自分」という存在を認識し、評価しています。心理学ではこれを「ミラーリング」と呼びます。

人から温かい言葉をかけられたり、自分の存在を認められたりすると、「自分は大切な存在なんだ」という自己評価が高まります。一方、人から無視されたり、否定されたりすると、「自分は価値のない人間だ」という自己評価を下げてしまいます。

自己評価が低いと、他人からの承認を過剰に求めたり、逆に他人からの評価を恐れて、人を遠ざけたりすることがあります。その結果、健全な人間関係を築けず、人から大切にされる機会が減り、さらに自己評価が下がるという悪循環に陥るのです。


3. 投影(Projection)

「投影」とは、自分が受け入れたくない感情や欲求、特徴などを、無意識のうちに他人に押し付けてしまう心の働きです。

「自分を大切にできない人」は、しばしば自己批判が強かったり、自分の中の未熟な部分や欠点を受け入れられなかったりします。そうしたネガティブな感情を、無意識のうちに他人へ「投影」してしまうことがあります。

たとえば、「自分はダメな人間だ」という思いを抱えている人は、他人の欠点ばかりが目につくようになり、「あの人はどうせ裏切るに違いない」と勝手に決めつけたり、「あの人は自分を馬鹿にしている」と被害妄想を抱いたりすることがあります。

その結果、相手を攻撃したり、一方的に関係を断ったりしてしまい、結果的に人から大切にされない状況を作り出してしまうのです。


負のループから抜け出すための第一歩


では、この負のループから抜け出すためにはどうすればいいのでしょうか。その鍵は、やはり「自分を大切にすること」にあります。

これは単に贅沢をしたり、好きなことをしたりする、といった表面的なことではありません。心理学的に「自分を大切にする」とは、以下の3つのステップを実践することです。


Step 1: 自分の感情に気づく(Self-Awareness)

まずは、自分の感情を「良い」「悪い」と判断せず、ただ受け止めることから始めましょう。「今、悲しいんだな」「本当はもっと認められたいと思っているんだな」と、自分の内側で起こっていることを客観的に観察します。

これは「マインドフルネス」の実践にも通じることで、感情を否定せずにただ見つめることで、自分自身への理解が深まります。


Step 2: 自分に寄り添う(Self-Compassion)

感情に気づいたら、次に大切なのは、その感情を抱えている「自分」に寄り添うことです。

失敗した時、悲しい時、「なんでこんなこともできないんだ」と自分を責めるのではなく、「つらかったね」「よく頑張ったね」と、親友に接するように温かい言葉をかけてみてください。

これは、批判的な自分自身から、慈悲深い自分自身へと、心の声を変えるトレーニングです。自己批判のループを断ち切り、自分自身にとっての「安全基地」を内側に築くことができます。


Step 3: 境界線を引く(Boundaries)

自分を大切にする上で欠かせないのが、他者との間に健全な「境界線(バウンダリー)」を引くことです。

他人の要求に全て応えたり、自分の気持ちを押し殺してまで相手に合わせたりすることは、自分を大切にしていることにはなりません。

「それはできません」「今は手伝うことが難しいです」と、自分の気持ちや限界を正直に伝えることは、最初は勇気がいるかもしれません。しかし、これは自分を守るための大切な行為です。健全な境界線を持つことで、他者からの不当な扱いに「NO」と言えるようになり、結果的に人から大切にされる機会が増えていきます。


最後に

「人を大切にできない人は、自分を大切にできていない人」という言葉は、誰かを責める言葉ではありません。むしろ、私たちがより良い人間関係を築くための、重要なヒントを与えてくれているのです。

負のループを断ち切る鍵は、外側にあるのではなく、私たち自身の心の中にあります。まずは自分自身を温かく、慈悲深く見つめ直すこと。それが、人を心から大切にし、人からも大切にされる、健全な関係性を築くための最初の一歩となるでしょう。

あなたが今、誰かに大切にされていないと感じていたり、人を大切にできない自分に悩んでいたりするなら、まずはほんの少し、自分自身に優しく接することから始めてみませんか?


 
 
 

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