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「大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしてしまう」心の裏側

「○○ちゃんはしっかりしてるから大丈夫」。

幼い頃、親や先生、周りの大人からそう言われた経験はありませんか?

私もその一人です。

褒め言葉として言われたはずなのに、なぜか胸の奥がチクリと痛む。そう言われるたびに、「しっかりしなきゃ」「期待に応えなきゃ」と無意識のうちに自分を奮い立たせ、本当は弱音を吐きたい時も、辛い時も、「大丈夫なふり」をしてきた。そして大人になった今、気づけばいつも一人で抱え込み、誰にも頼れなくなっている…。

今回はそんな「大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしてしまう」心のメカニズムを、心理学の観点から一緒にひも解いていきましょう。


心理学で考える「大丈夫なふり」の正体

なぜ私たちは、無理をしてまで「大丈夫なふり」をしてしまうのでしょうか?その背景には、いくつかの心理的な要因が複雑に絡み合っています。


1. 幼少期の経験:期待に応えるためのセルフイメージ

「しっかり者」というレッテルを貼られて育った場合、私たちは無意識のうちに**「しっかり者」でなければ愛されない、価値がない**という信念を形成してしまいます。これは、自己肯定感が周りからの評価に依存してしまう状態です。

幼い頃、周りの大人たちは、あなたが困難を乗り越える姿や、一人で頑張る姿を見て「すごいね」「さすがだね」と褒めてくれたでしょう。その結果、「頑張ること」「弱音を吐かないこと」が、愛情や承認を得るための唯一の方法だと学習してしまうのです。


2. 完璧主義:失敗を恐れる心の防衛

「大丈夫なふり」をしてしまう人の多くは、完璧主義の傾向を併せ持っていることがあります。完璧主義の人は、「完璧でなければ意味がない」「失敗は許されない」という強い信念を持っています。

弱音を吐いたり、誰かに助けを求めたりすることは、自分にとっての「失敗」だと感じてしまうのです。「こんな簡単なこともできないなんて」「一人で解決できないなんて、自分はダメだ」という自己批判の感情が湧き上がり、それを避けるために「大丈夫」という仮面を被ってしまうのです。


3. 感情の抑制:感情を表現することへの恐れ

幼い頃から感情を素直に表現する機会が少なかったり、「泣かないで」「しっかりしなさい」と言われ続けてきた場合、自分の感情を押し殺す癖がついてしまいます。

感情の抑制は、一時的に心のバランスを保つための防衛機制として機能しますが、長期的に見ると大きな負担となります。悲しみや辛さ、怒りといったネガティブな感情を感じても、「こんな感情を持つべきではない」と否定し、心の奥底に封じ込めてしまう。その結果、本当の自分と向き合うことができなくなり、心身ともに疲弊してしまいます。


「大丈夫なふり」が引き起こす心と体の不調

こうした「大丈夫なふり」は、短期的には周囲との関係を円滑に保つために役立つかもしれませんが、長期的には心身に様々な不調を引き起こします。


  • 燃え尽き症候群(バーンアウト)常に期待に応えようと頑張り続けることで、心身ともにエネルギーが枯渇し、無気力や絶望感に襲われることがあります。

  • 自律神経の乱れ常に緊張状態が続くことで、不眠、頭痛、胃腸の不調など、身体的な症状が現れることがあります。

  • インポスター症候群(詐欺師症候群)自分の成功や成果は、実力ではなく、単なる運や周りを欺いた結果だと感じてしまう状態です。「こんなすごい仕事、自分にはふさわしくない」「いつか自分の無能さがバレてしまう」という強い不安を常に抱え、より一層「しっかり者」を演じ続けなければならないと感じてしまいます。

  • 人間関係の希薄化弱音を吐けず、本音で付き合える人がいなくなることで、孤独感や孤立感が深まります。

  • 自己肯定感の低下自分の感情や弱さを受け入れられないため、表面上はしっかりしていても、心の奥底では「自分はダメだ」という感覚が強くなります。


「大丈夫なふり」から抜け出すための第一歩

では、このループから抜け出すためにはどうすれば良いのでしょうか?


1. 自分の「大丈夫じゃない」を認識する

まずは、「大丈夫じゃない」自分を認めることから始めましょう。「ああ、今自分は辛いんだな」「助けてほしいって思ってるんだな」と、心の中の声を否定せずに、ただただ受け入れてあげること。これが、変化の第一歩です。


2. 小さな「SOS」を出す練習をする

最初から大きな悩みを話す必要はありません。「ちょっと手伝ってもらってもいい?」とか、「これってどう思う?」など、本当に小さなことから誰かに頼る練習をしてみましょう。

誰かに頼ることは、決して**「迷惑をかけること」**ではありません。むしろ、人間関係を深めるための素晴らしい機会です。人は、誰かの役に立つことで幸福感を感じる生き物です。あなたが頼ることは、相手に喜びを与えることにもつながるのです。


3. 感情を言語化する練習をする

日々の出来事の中で、「今、自分はどんな気持ちだろう?」と立ち止まって考えてみましょう。日記をつける、信頼できる人に話す、カウンセラーに相談するなど、自分の感情を言葉にする機会を意識的に増やしてみてください。

感情を言語化することで、自分の心の状態を客観的に見つめることができ、感情に飲み込まれることを防ぐことができます。


あなたは「弱い」のではなく、「人間らしい」のです

「しっかりしなきゃ」という呪縛から解放されることは、決して「弱くなる」ことではありません。むしろ、ありのままの自分を受け入れ、**「人間らしい」**自分になることです。

人は誰もが弱さや不完全さを持っています。その弱さを見せ合える関係こそが、本当の信頼関係を築きます。

「大丈夫じゃない」と素直に言えること、誰かに頼れること。それは、強さの証です。

もし今、あなたが一人で頑張りすぎて苦しんでいるなら、まずは深く息を吐いてみてください。そして、「大丈夫じゃない」と、心の中でつぶやいてみてください。

あなたの心は、その一言をずっと待っているはずです。


 
 
 

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