不安のレールから降りる:未来をデザインする心理学
- nirin-so

- 9月13日
- 読了時間: 4分
未来への不安が消えない時、私たちはしばしば「未来は過去の延長線上にある」と考え、
過去の経験を持ちだしては不安を感じてしまいがちです。
しかし、「未来は過去から繋がる線路の上にあるのではなく、飛び石のように次の一歩は選べる」という考えれば希望が持てます。
認知再構成:思考のフレームワークを組み替える
私たちは、現実をそのまま見ているわけではありません。出来事に対して、過去の経験や信念に基づいて独自の解釈を加えています。
この「解釈の枠組み」を心理学ではスキーマ(Schema)と呼びます。
例えば、「過去に失敗したから、未来もまた失敗するだろう」というスキーマを持っていると、未来への不安は募る一方です。これは、過去から未来へ続く一本のレールに乗っているかのような感覚を生み出します。
しかし、冒頭にあるように、未来を「飛び石」として捉え直すことで、思考のフレームワークは大きく変わります。失敗の経験は、もはや未来を規定するレールではなく、「次はどの石に飛び移るか」を考えるための情報の一つに過ぎません。
不安を感じる時、私たちは無意識のうちに自動思考に支配されがちです。これは、特定の出来事に対して瞬時に浮かぶ、ネガティブで歪んだ考えのことです。
例えば、「このプロジェクトが失敗したら、自分のキャリアは終わる」といった思考です。
認知再構成は、この自動思考を意識的に特定し、より現実的でバランスの取れた思考へと置き換えるプロセスです。
自動思考の特定: まず、「このプロジェクトが失敗したら、自分のキャリアは終わる」という自動思考を自覚します。
証拠の検討: 次に、この思考を支持する証拠と、反証する証拠を客観的に検証します。本当に一つの失敗で全てが終わるのか?過去には困難を乗り越えた経験はなかったか?
代替思考の形成: 最後に、より建設的な代替思考を考えます。「たとえこのプロジェクトがうまくいかなくても、そこから得られる学びは必ずある。この経験を次の挑戦に活かそう」
このように、不安の根源にある思考パターンに意識的に介入することで、未来への見通しは大きく変わります。
焦点を変える:選択的注意とセルフ・コンパッション
意識をどこに向けるかで、その後の展開が変わってきます。これは脳の網様体賦活系(R AS)の働きを利用します。
RASは、脳のフィルター機能です。膨大な情報の中から、自分にとって重要だと判断した情報だけを意識に上らせる役割を担っています。
例えば、新しい車を買おうと決めた途端、街中で同じ車種ばかりが目に入るようになった経験はありませんか?これは、RASが「この車は自分にとって重要だ」と認識し、関連する情報を選び取って意識に提示しているからです。
不安を感じている時、私たちのRASは「危険」「失敗」「困難」といった情報ばかりを拾い集めがちです。これは、自己防衛本能として自然な反応ですが、過剰になると不安の悪循環に陥ります。
しかし、このRASの焦点を意識的に変えることで、私たちは未来を能動的にデザインできます。
不安ではなく、希望に焦点を当てる: 不安な出来事ばかりに目を向けるのではなく、これまでの成功体験、得意なこと、ささやかな喜びなど、ポジティブな側面に意識的に焦点を当ててみましょう。
未来のビジョンを具体的に描く: どんな未来を創りたいのか、どんな自分になりたいのかを具体的にイメージすることで、RASは必要な情報や機会を無意識のうちに探し始めます。
行動の心理学:セルフトークとスモールステップ
最後に、この前向きな思考を定着させるための具体的な行動についてお話します。
「自分に備わる素晴らしい機能をフルに信用し、フル活用する」ための最もシンプルで効果的な方法はポジティブなセルフトークです。「私はできる」「私は価値がある」といった、自分自身に向けた肯定的な言葉を心の中、または口に出して繰り返し唱えます。
繰り返すことで、無意識レベルにある自己否定的なスキーマが書き換えられ、自己肯定感を高めることができます。
まとめ
未来への不安は、私たちが持つ思考のフレームワークや、意識の焦点によって大きく左右されます。
未来は過去から繋がるレールの上ではなく「飛び石」として捉えれば、一歩先の未来は自分で選び取れます。
認知再構成、RASの活用、そしてセルフ・コンパッションと自己効力感を育むことで、私たちは不安の悪循環から抜け出し、自分らしい未来を能動的にデザインできるようになるのです。
自分に備わる素晴らしい力を信じて、まずは今日、小さな一歩を踏み出してみませんか?
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