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傷つきやすいあなたへ。自分を守る「スルー力」

毎日を生きていると、心をネガティブに引っ張る情報はどこからともなく飛び込んできます。

職場での愚痴、街中で耳にする不満の声。時には、自分自身の中から湧き上がる「どうせ私なんて…」というネガティブな思考に苦しむこともあるでしょう。

これらの情報にいちいち心を揺さぶられていたら身が持ちません。

自分らしく、穏やかに生きていくためには、自分にとって不快な情報や感情を「スルーする力」、つまりスルースキルを身につけることが不可欠です。


この「スルー力」は、決して無関心になることや、心を閉ざすことではありません。自分の心のエネルギーを守り、本当に大切なことに集中するための、健全な心の防御策なのです。


なぜ私たちは「スルー」が苦手なのか?


「スルー力」を身につける前に、なぜ私たちはネガティブな情報に引きずられやすいのか、その心理的なメカニズムを見ていきましょう。


1. ネガティビティ・バイアス(Negative Bias)

人間の脳には、ネガティブな情報に強く反応し、記憶にとどめやすいという性質があります。これをネガティビティ・バイアスといいます。進化の過程で、危険を回避するために身についた能力ですが、現代社会ではこれが裏目に出て、私たちはポジティブな出来事よりも、たった一つの否定的な言葉に深く傷ついてしまうのです。


2. 反芻思考(Rumination)

他人の心ない一言や、自分の失敗について何度も何度も頭の中で繰り返してしまうことを反芻(はんすう)思考と呼びます。これはまるで、牛が一度食べたものを再び口に戻して反芻するように、ネガティブな感情を繰り返し味わう状態です。反芻思考は、ストレスホルモンであるコルチゾールを増加させ、精神的な疲労を加速させます。


3. 心理的リアクタンス(Psychological Reactance)

「ネガティブなことを考えないようにしよう」と強く意識すればするほど、かえってその思考に囚われてしまうことがあります。これは心理的リアクタンスと呼ばれる現象で、自由を制限されることに対する反発から生じます。無理に思考をコントロールしようとすると、その反動でネガティブなループから抜け出せなくなるのです。


「スルー力」を育てる3つの心理学テクニック


では、これらの心理的な罠を回避し、「スルー力」を育てるにはどうすればいいのでしょうか。具体的な3つの心理学テクニックをご紹介します。


テクニック1:メタ認知を働かせる

メタ認知とは、「自分自身の思考や感情を客観的に認識する能力」のことです。ネガティブな情報に触れたとき、「あ、今私はこの言葉に傷ついているな」「また反芻思考が始まっているな」と、一歩引いた視点から自分の心の動きを観察します。

「自分は今、悲しい気持ちになっている」とただ認識するだけで、感情と自分自身を切り離すことができます。感情の渦の中に巻き込まれるのではなく、それを眺めるような感覚です。これにより、感情の波に飲まれず、落ち着いて対処できるようになります。


実践方法:

  1. ネガティブな感情が湧いたら、心の中で「私は今、〜〜と感じている」と実況中継してみる。

  2. 感情を評価したり、否定したりせず、ただ「そうか、こういう感情なんだな」と受け止める。


テクニック2:ディタッチメント(精神的分離)を試みる


他者のネガティブな発言は、相手の個人的な感情や、その人の置かれた状況から生じていることがほとんどです。しかし、私たちはついそれを自分のせいだと感じてしまいがちです。

ディタッチメントとは、他者の感情や問題と自分自身とを切り離すことです。「その人の問題」と「自分の問題」を明確に区別し、相手のネガティブな感情の責任を自分が負う必要はないと自覚します。

例えば、「あなたの企画はダメだ」と言われたとします。このとき、「ああ、私はダメな人間なんだ」と受け止めるのではなく、「この人は今、何か不満があって、それを私の企画にぶつけているのかもしれない」と、相手の感情と自分の価値を切り離して考えるのです。


実践方法:

  1. 誰かのネガティブな言葉を聞いたとき、「これは私に対する攻撃か?」と自問自答する。

  2. 攻撃ではない場合、「これは相手の問題だ」と心の中でつぶやき、物理的・心理的な距離を取る。


テクニック3:セルフ・コンパッション(自己への思いやり)を実践する


「スルー力」を語る上で、最も重要になるのがセルフ・コンパッションです。これは、自分の失敗や弱点に対して、他者に向けるような温かさや理解、思いやりを持って接することです。

ネガティブな思考に陥ったとき、「なぜこんなにネガティブなんだ」と自分を責めるのではなく、「今は疲れているんだな」「誰だってこういう時もあるさ」と、優しく受け入れます。自分を責めるエネルギーを、自分を癒すエネルギーに変換するのです。

完璧な人間はいません。ネガティブな感情を抱く自分を否定せず、「そういう時もある」と認めることで、心の防御力が格段に高まります。


実践方法:

  1. 失敗したとき、「もし親友が同じ失敗をしたら、なんと言ってあげるか?」を考える。

  2. その言葉を、そのまま自分自身にかけてあげる。



「スルー力」は、あなたを幸せにする武器


「スルー力」は、無視する冷たい力ではありません。それは、自分自身の心と向き合い、本当に大切なものにエネルギーを注ぐための、温かく、そして力強いスキルです。

ネガティブな情報に振り回されるのではなく、それを「ああ、また来てるな」と冷静に見つめ、さらりと受け流す。

今日から少しずつでも、この「スルー力」を意識して、あなたの心の「凪」を守ってあげてください。


 
 
 

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