top of page
検索

幸せを受け取ることへの恐れ:なぜ私たちは「罰」を恐れるのか?

更新日:7月24日

あなたは今、幸せを感じていますか? もしそうなら、その幸福を心の底から享受できていますか? もしかしたら、心のどこかで「こんなに幸せだと、後で悪いことが起こるんじゃないか?」という漠然とした不安を感じ、幸せになることにブレーキをかけているかもしれません。この感覚は、特にアダルトチルドレン(AC)の方によく見られる傾向です。

心理学では、この「幸せの受け取り拒否」とも言える現象をどのように捉えているのでしょうか。そして、なぜ私たちは自らの幸福を遠ざけてしまうことがあるのでしょうか。


幸福への恐れ:その心理的メカニズム

私たちは本来、幸せを求める生き物です。それなのに、なぜ幸せを受け取ることに抵抗を感じてしまうのでしょうか。そこには、いくつかの心理的なメカニズムが作用しています。


1. 幼少期の経験と学習

幸福への恐れの根源は、多くの場合、幼少期の経験にあります。特に、親や養育者との関係において、以下のような体験をした方は、幸せへのブレーキがかかりやすい傾向にあります。

  • 不安定な環境での生育: 幼少期に、親の機嫌が変わりやすかったり、予測不能な出来事が頻繁に起こる不安定な家庭で育った場合、子どもは「良いことの後に悪いことが起こる」というパターンを学習してしまいます。例えば、親がご機嫌で優しくしてくれた直後に、些細なことで激しく叱られたり、期待を裏切られたりする経験が繰り返されると、「幸せな状態は長く続かない」「幸せになったら、次は罰が当たる」といった誤った信念を形成してしまうのです。

  • 罪悪感の刷り込み: 幼い頃に、何か良いことがあったときに「調子に乗るな」「いいね、あんたは」といった言葉をかけられた経験があるかもしれません。また、家庭内で誰かが苦しんでいる状況で自分だけが幸せを感じることに罪悪感を抱くよう教えられたケースもあります。これにより、「幸せを感じることは悪いことだ」という無意識のプログラミングがなされてしまうことがあります。

  • 過度な期待とプレッシャー: 親から過度な期待をかけられ、常に完璧であることを求められた子どもは、成功や幸福を達成しても、それが一時的なものであり、すぐに次の高いハードルが待ち受けていると感じやすいです。「もっと頑張らなければ」という強迫観念から、心から幸せを感じることが難しくなります。


これらの経験は、意識の奥底に「幸せ=危険」という方程式を植え付けてしまいます。そのため、実際に幸せな状況に直面すると、無意識のうちに不安や警戒心が働き、その幸福を遠ざけようとしてしまうのです。


2. 「罰が当たる」という信念

この「罰が当たる」という感覚は、自動思考の一つとして現れることがあります。何らかの成功を収めたり、望ましい状況が訪れたりしたときに、条件反射的に「こんなに良いことがあったのだから、次は悪いことが起こるだろう」と考えてしまうのです。これは、過去の経験から学習された防衛機制であり、未来の不幸を予期することで、精神的なダメージを軽減しようとする無意識の試みでもあります。しかし、結果的には、自ら幸せを制限してしまうことになります。


3. 自己肯定感の低さ

自己肯定感が低い人は、「自分は幸せになる価値がない」という感覚を抱いていることがあります。そのため、実際に幸せな状況が訪れても、それを受け入れることに抵抗を感じ、「これは自分にはもったいない」「きっと何か間違いだ」と考えてしまうのです。自分自身の価値を認められないがゆえに、幸福を内側に受け入れることができず、跳ね返してしまうという悪循環に陥ります。



アダルトチルドレンと幸福への恐れ

特にアダルトチルドレン(AC)にこの傾向が強いのはなぜでしょうか。ACとは、機能不全家族(アルコール依存症、家庭内暴力、虐待、ネグレクト、過干渉など)で育ったことにより、成人してもなおその影響を受け、人間関係や自己肯定感、感情表現などに困難を抱える人々を指します。

機能不全家族で育った子どもは、親の不安定な状態や予測不能な行動に適応するため、常に周囲の顔色を伺い、自分の感情を抑圧して生きてきました。彼らにとって、安心して感情を表現したり、心から喜びを分かち合ったりする経験は乏しいものです。

  • 感情の抑圧: 喜びや楽しみといったポジティブな感情も、幼少期に抑圧されてきた感情の一部です。そのため、大人になってからも、心から幸せを感じることへの許可が出せないことがあります。

  • 他者への過度な配慮: 周囲の状況に敏感なACは、自分が幸せになることで、他者を不快にさせたり、迷惑をかけたりするのではないかと恐れることがあります。特に、家族の中に苦しんでいる人がいる場合、自分だけが幸せになることに罪悪感を抱きやすいです。

  • 見捨てられ不安: 幸せな状態が壊れることへの強い不安、つまり「見捨てられるのではないか」という恐れも根底にあります。過去に愛する人や頼れる存在が突然いなくなった経験がある場合、幸せを享受することで、その幸せが失われることへの恐怖が増幅されます。


これらの背景から、ACは特に「幸せになったら罰が当たる」という信念を強く持ちやすく、幸せを受け取ることにブレーキをかけてしまいがちなのです。



幸せを受け取るために:心のブレーキを外す方法

では、この心のブレーキをどのように外していけば良いのでしょうか。


1. 自分の感情を認識する

まず、自分が幸せを感じたときに、どのような不安や恐れが湧き上がってくるのかを認識することが第一歩です。「今、幸せを感じているけど、なんだか落ち着かないな」「後で悪いことが起こりそうだと感じているな」と、自分の心の動きを客観的に観察してみましょう。

2. 過去の経験と現在の感情を結びつける

なぜ自分が「罰が当たる」と感じるのか、そのルーツを探ることも重要です。幼少期のどのような経験が、この信念を形成したのかを振り返ってみましょう。過去の経験が、現在の感情に影響を与えていることを理解するだけでも、心の負担が軽減されることがあります。

3. 認知の再構築

「幸せになったら罰が当たる」という信念は、根拠のない自動思考です。この思考を意識的に問い直し、再構築することが大切です。「本当にそうなのか?」「幸せと不幸は常にセットなのか?」と自問自答してみましょう。ポジティブな出来事の後に、必ずしもネガティブな出来事が起こるとは限りません。

4. 小さな幸せから受け入れる練習

いきなり大きな幸せを受け入れるのが難しい場合は、日常生活の中の小さな幸せから意識的に受け入れる練習をしてみましょう。美味しいコーヒーを飲んだときの満足感、美しい景色を見たときの感動など、ささやかな喜びを心ゆくまで味わい、「これは私が受け取って良い幸せだ」と自分に許可を与えてみてください。

5. 自己肯定感を高める

自分は幸せになる価値がある人間だと信じることが、幸福を受け入れる土台となります。日々の小さな成功を認めたり、自分の良い点に目を向けたりする習慣をつけましょう。アファメーション(肯定的な自己宣言)も有効です。例えば、「私は幸せを受け取る価値がある」「私は愛と豊かさを受け入れる」といった言葉を毎日唱えることも効果的です。

6. 専門家のサポートを検討する

もし、一人でこの問題に取り組むのが難しいと感じる場合は、心理カウンセリングやセラピーを受けることを検討してみましょう。専門家は、あなたの過去の経験を深く理解し、心の傷を癒し、新たな行動パターンを構築するためのサポートをしてくれます。特に、ACの傾向が強いと感じる場合は、トラウマケアに詳しいカウンセラーを探すことが有効です。



まとめ

幸せを受け取ることにブレーキがかかるのは、あなたが弱いからでもおかしいからでもありません。それは、過去の経験から身についた、あなた自身を守るための心の防衛反応です。しかし、その防衛反応が、今のあなたの幸福を阻害しているのであれば、意識的にそのパターンを変えていく必要があります。

「幸せになったら罰が当たる」という幻想から解放され、あなたが本来持っている幸せを受け取る力を再発見してください。あなたは、幸せになることに何の罪悪感も抱く必要はありません。心からの喜びを受け入れ、あなた自身の人生を豊かに彩る権利があるのです。

あなたの幸せを心から応援しています。このブログを読んでくださったあなたが、少しでも心のブレーキを緩め、幸福を受け入れる一歩を踏み出せることを願っています。



あなたは今、どのような幸せを感じていますか? そして、その幸せを心ゆくまで享受するために、今日からできることは何でしょうか?一緒に考えてみませんか?


 
 
 

コメント


Copyright  親子カウンセリングコーチングNirin-so
bottom of page