心理学的視点から読み解く「すごいね!」と「えらいね!」褒め方の違いとは?
- nirin-so

- 11月6日
- 読了時間: 4分
「褒める」という行為は、単に相手を喜ばせるだけでなく、その人の行動、思考、そして自己概念に深く影響を与える、極めて重要なコミュニケーションのツールです。
「すごいね!(行動や結果を褒める)」と「えらいね!(その人の在り方を褒める)」
という二つの褒め言葉は、心理学的に見ると、それぞれ異なるメカニズムで人の心に働きかけ、動機づけや自己肯定感の形成に大きな違いを生み出すことがわかっています。
1. 認知心理学が示す褒め方の影響
A. 「すごいね!」:結果・能力へのフィードバック
「すごいね!」は、何かを成し遂げた行動や結果、あるいはその背後にある能力に焦点を当てた褒め言葉です。
効果:
達成感を与え、短期的なパフォーマンス向上を促します。
外発的動機づけ(褒められたい、認められたいという外部からの刺激)を高める効果があります。
心理学的リスク:
アメリカの心理学者キャロル・S・ドゥエックの研究など、多くの研究が示唆するのは、能力(知能や才能)を褒めることは、かえって長期的な成長を阻害する可能性があるということ。
「すごいね!」が「あなたは才能があるからできたんだ」というメッセージとして受け取られると、その人は失敗を恐れ、「すごい」と思われなくなることを避けるために、難しい課題への挑戦を避けるようになる傾向があります。これは、「固定思考」を助長する可能性があります。
結果が出なかった場合、「自分は能力がない」と自己評価を下げるリスクもあります。
B. 「えらいね!」:存在・人格へのフィードバック
「えらいね!」は、「良い子だ」「立派だ」といった、その人の存在そのもの、あるいは人格的側面を褒めていると解釈されます。
効果:
承認欲求を満たし、自己肯定感を育む上で非常に強力です。
「自分は価値のある人間だ」という存在承認につながり、特に幼少期の愛着形成や情緒の安定に不可欠な要素となります。
心理学的リスク:
レッテル効果(ラベル付け効果)として、ポジティブな自己イメージを形成する一方で、「えらい子でいなければならない」という過度なプレッシャーを無意識に与えてしまう可能性があります。
行動や努力の具体的な根拠がないまま「えらい」と褒められると、何が良かったのかが曖昧になり、自律性や内発的動機づけ(自分自身の興味や喜びに基づいた動機)の成長を妨げる恐れもあります。
2. 成長を促すためのプロセス承認の重要性
上記の分析から、単に「すごいね!」や「えらいね!」といった抽象的な褒め言葉だけでは、長期的な成長やレジリエンス(精神的回復力)の獲得には不十分であることがわかります。
そこで心理学が推奨するのが、「プロセス承認」、すなわち行動の過程や努力に焦点を当てた褒め方です。
プロセス承認とは:
「最後まで諦めずに、粘り強く取り組んだね」
「途中でやり方を変えてみる工夫をしたのが良かったよ」
「失敗しても、またすぐに立ち上がって挑戦した姿勢が素晴らしい」
プロセスを褒めることは、「あなたは努力できる人だ」「あなたは成長できる人だ」というメッセージを伝え、「成長思考」を育みます。成長思考を持つ人は、失敗を能力の欠如ではなく、「まだ解決できていない課題」と捉え、再挑戦への意欲が高まります。
3. まとめ:内発的動機づけを育む褒め方のフレームワーク
人を真に伸ばす褒め方は、この三つの視点(結果・存在・プロセス)を意識的に使い分けることです。
褒めの種類 | 心理学的役割 | 具体的な言葉(アレンジ) |
プロセス承認 | 成長思考を育む | 「粘り強く頑張ったね」「工夫したね」 |
結果承認 | 達成感と目標達成意欲を高める | 「この結果は本当に素晴らしいね」 |
存在承認 | 自己肯定感と安心感を与える | 「あなたがいてくれると助かるよ」「いつもありがとう」 |
特に重要なのは、結果の良し悪しに関わらず、具体的な行動とその過程にある努力(プロセス)を言葉にすることです。
その上で、何かを成し遂げた結果(すごいね!)と、その人の日々の努力や根底にある価値、存在(えらいね!の真意)を適度に認めることが、相手のモチベーションを深め、より豊かで持続的な成長へと導く鍵となります。
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