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願うと叶わない?脳の仕組みと願望実現:RAS(網様体賦活系)の働きを理解する

人が「〜したい」と願うとき、なぜその思いが実現しにくいのか、という問いは、脳の仕組みを理解することでより深く理解できます。 心理学の分野では、この現象をRAS(Reticular Activating System:網様体賦活系) の働きを通して説明することが可能です。

RASは、脳幹の中央部に位置する神経ネットワークで、外界からの膨大な情報の中から、自分にとって重要だと判断した情報のみを選び取り、意識に上げるフィルターのような役割を担っています。私たちの五感から入ってくる情報量は毎秒1100万ビットとも言われていますが、そのすべてを意識することはできません。RASがなければ、私たちは情報過多でパニックに陥ってしまうでしょう。

このRASの働きを、あなたの望みと関連付けて考えてみましょう。



「したい」が願望実現を遠ざけるメカニズム

「〇〇したい」という言葉には、「今は〇〇できていない」という現状への認識が潜在的に含まれています。たとえば、「もっとお金が欲しい」と願う人は、今の自分は「お金が足りていない」という現状を無意識のうちに認識しています。この「足りていない」という不足感に意識が集中すると、RASは「お金がない」という情報を重要だと判断します。

すると、どうなるでしょうか?

RASは、あなたの意識を「お金がない」という現実を裏付ける情報ばかりに引き寄せます。

  • お金がないから買えないものの情報

  • お金の心配をさせるようなニュース

  • 他人の豊かな生活を羨ましく思う感情

こうした情報が次々とあなたの意識に上がり、「やっぱり自分はお金がないんだ」という自己認識をさらに強化していきます。これにより、脳は「お金がない」という状態を現状維持しようと働いてしまうのです。

これは、RASが「現状維持」を好む性質を持っているためです。脳は、今の状態を安全だと認識すると、その状態を保とうとします。もしあなたが「お金がない」という状態を強く意識していれば、脳はそれを「現状」として捉え、そこから抜け出すための行動を阻害したり、新しいチャンスに気づかせないようにしたりします。



RASを味方につけるための思考法

では、どのようにすればRASを味方につけ、望みを叶えることができるのでしょうか?それは、「したい」という不足感からくる思考を、「行動そのもの」に焦点を当て、「したい」ではなく、「する」という意図に切り替え、イメージトレーニングすることです。


1. 望みをありありとイメージする

「旅行したい」ではなく、「私は南国のビーチで太陽の光を浴びている」というように、すでにその望みが叶っている状態を具体的にイメージします。このとき、五感をフル活用することが重要です。これを内的体験と言います。

  • 視覚: ビーチの青い海や白い砂浜、ヤシの木の緑

  • 聴覚: 波の音、鳥のさえずり

  • 嗅覚: 潮風の香り、ココナッツの甘い匂い

  • 触覚: 太陽の温かさ、砂の感触

こうして具体的なイメージを脳にインプットすることで、RASは「これは私にとって重要なことだ」と判断します。すると、あなたの意識は、そのイメージを実現するための情報や機会を探し始めるようになります。例えば、旅行プランの割引情報が目に留まったり、偶然旅行先の情報を耳にしたりするようになるでしょう。

これは、あなたが赤い車を買いたいと思った途端、街中を走る赤い車ばかりが目に付くようになる現象と同じです。RASが「赤い車」という情報を重要だと認識し、その情報を意識に上げているのです。


2. 行動に焦点を当てる

「旅行したい」という漠然とした願望ではなく、旅行を実現するための具体的な行動に意識を向けます。

  • 「どの航空券を予約しようか?」

  • 「どのホテルに泊まろうか?」

  • 「旅行先で何を食べようか?」

このように、思考を「旅行そのもの」という具体的な行動にシフトすることで、脳は「旅行する」という未来に向けて動き始めます。これは、「したい」という感情ではなく、「する」という意思に基づいた思考です。

心理学では、これを**「意図の形成」**と呼びます。意図が明確になると、脳はその意図を実現するための最適な道筋を探し始めます。無意識のうちに、旅行先の情報をインターネットで調べたり、友人に旅行の話をしたりするなど、具体的な行動に結びつくような思考や言動が増えていきます。



願望実現のための実践的なステップ

では、具体的な実践方法として、以下のステップを試してみましょう。

  1. 望みを明確にする: まず、あなたが本当に望んでいることは何かを具体的に言葉にします。「お金が欲しい」ではなく、「毎月50万円の収入を得て、家族と海外旅行に行く」のように、できるだけ詳細に言語化します。

  2. 感情を伴うイメージング: 望みが叶った状態を五感を使って鮮明にイメージします。そのとき、どのような感情を抱いているかに意識を向けましょう。「嬉しい」「安心する」「ワクワクする」といったポジティブな感情を伴うことで、脳はそれを「達成すべき目標」として強く認識します。

  3. 目標を細分化する: 大きな望みを、小さな達成可能なステップに分解します。たとえば、「毎月50万円の収入を得る」という目標なら、「新しいスキルを学ぶ」「副業を始める」といった具体的な行動に落とし込みます。小さな成功体験を積み重ねることで、自己効力感が高まり、モチベーションを維持しやすくなります。



まとめ

「〜したい」という願望は、しばしば「〜できていない」という不足感に意識を向けさせ、RASを現状維持の方向へと働かせてしまいます。望みを叶えるためには、このRASの性質を理解し、「すでに叶っている状態」「具体的な行動」に意識を集中させることが重要です。

思考の焦点を変えることで、脳はあなたの望みを実現するための情報を積極的に探し始め、無意識のうちに行動を促すようになります。これは、スピリチュアルな話ではなく、脳科学に基づいた心理学的アプローチです。今日から「〜したい」を「〜する」に変えて、あなたの望みを現実のものにしていきましょう。


 
 
 

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